ホモグラフトとはなに、その対象となる病気は?

亡くなった人（ドナー）から
提供された心臓弁や

血管の組織（ホモグラフト）の
移植手術が保険適用になって6年となります。

重い心臓病などを抱える人にとって
重要な治療法の一つですが、

提供数は圧倒的に
不足しているのが現状です。
　
そこで今回は、ホモグラフトとは
どのようなもので、

その対象となる病気について
お伝えしてまいります。

ホモグラフトとはなに、その対象となる病気は?

ホモグラフトの「ホモ」は同種、
「グラフト」は組織片の意味で、

人への移植を目的に、
人から提供された心臓弁と血管を指します。

国内では1960年代から
ホモグラフトの移植が始まりました。

2016年度から保険適用となり、
基準を満たした病院であれば、
移植が可能となりました。

臓器移植と異なり、
組織の凍結などの処理をするため、
免疫抑制剤が不要です。

また、炭素繊維などで
作られた機械弁と比べて、

血栓（血の塊）ができにくく、
細菌感染にも強いという利点もあります。

耐久性については長年使用することで
石灰化して機能不全になることがありますが、
再手術が可能で過度の心配はいりません。

●ホモグラフトの対象となる病気
大動脈弁ホモグラフト
感染性心内膜炎、
先天性心疾患など

肺動脈弁ホモグラフト
「ノーウッド手術」
肺動脈弁ホモグラフトの一部を切り取り移植する
→自然なカーブの形状が心臓にはまり、
　大動脈が再建されやすくなる

胸部大動脈ホモグラフト
人工血管感染、感染症大動脈瘤など

ドナーは心臓弁、血管とも
70歳以下の人が対象です。

家族が、医師などにホモグラフトの
提供者意思を伝えると、

西日本では、国立循環器病研究センターが
事務局となる

「西日本組織移植ネットワーク」に
連絡がいきます。

その後、「組織移植コーディネーター」が
病院に派遣され、

家族に摘出までのながれなどの
情報提供をします。

家族の承諾が得られた場合は、
心停止から8時間以内に、
心臓弁や血管を摘出します。

ホモグラフト移植の
対象となる病気は様々です。

大動脈弁は、重度の感染を伴う
「感染症心内膜炎」に有用です。

このほか弁に異常があり、
妊娠や出産を希望する若い女性や
激しい運動をする人にも優先して使われます。

肺動脈弁は、先天性心疾患に使われます。

その中でも難病に指定されている
「左心低形成症候群」では、

生まれてすぐに全身に血液を
送り出す大動脈を再建する
「ノーウッド手術」が必要となりますが、

ホモグラフトの肺動脈弁のカーブした
形状が心臓にぴったりはまり、

縫合しやすく、
出血もしにくくなります。

心臓弁と血管の組織バンクを持つ
国立循環器病研究センターは、

2017年度には計18件の
ホモグラフトの提供を受けました。

しかし、その後伸び悩んでおり、
2021年度も5件（21年度末時点）に
とどまっています。

心臓血管外科医を対象に実施した
調査（2014年度）では、

57％がホモグラフトの使用を希望しており、
全国で年間約250件のホモグラフトが
必要と推定されました。

それに比べて、
現在は提供数が圧倒的に
不足している状態です。

ホモグライトの提供や
移植への理解が進んだ結果、

医療機関からドナー提供の
連絡を受ける件数は増えています。

しかし、、コーディネーターや
医師を派遣できるのが
近隣のエリアに限られ、

同センターの場合は、
大阪、兵庫、奈良の3府県のみです。

また、新型コロナウイルス感染症の
影響による面会の制限などにより、

ホモグライトの提供について
考える機会が減っていることも
影響しています。

同センターによると、
移植にはコーディネーターの人件費、

機器類の設置管理費など
多額の経費が必要で、

現在の保険点数では銃弾に
まかなえないという課題もあります。

●組織提供におけるフローチャート
家族が提供の意思を医師らに伝える
　↓　　　
西日本組織移植ネットワークに連絡
　↓
コーディネーターを派遣
　↓
情報提供
　↓
承諾
　↓
医療チームを派遣
　↓
摘出・凍結保存
　↓
移植手術
　↓
ドナーの家族に報告

●ホモグラフト弁と機械弁の違い
ホモグラフ弁　　　　　　　　機械弁
良好　　　　　　　弁機能　　良好
限界あり　　　　　耐久性　　良好
できにくい　　　　血栓　　　生涯、血のかたまりにくくする
　　　　　　　　　　　　　　薬の服用が必要
細菌の感染に強い　感染症　　抵抗性が弱い

まとめ

いかがだったでしょうか?

ホモグラフト移植への理解は
進みつつありますが、

実際の提供数は、米国など
諸外国に比べて圧倒的に少ない状況です。

全国どこでもこの治療を
受けることができるようにするために、

センター以外の協力施設を
増やしていきたいと考えています。

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